10月26日(火)
妻が今日から入院です。エコー診断の結果、羊水の量は65cc。50ccまでは許容範囲ということで、陣痛促進剤の投与は明日に延期になりました。担当の先生が緊急の患者に対応しなければならないそうです。
10月27日(水)
朝9時前、会社で仕事をしていると、入院中の妻から陣痛が始まったというメールが届きました。朝から陣痛促進剤の点滴を始めていたようです。職場の上司に許可を得て病院へ。
妻はまだ病室にいました。10時頃からだんだん陣痛が強くなり、11時ころに破水。分娩室まで歩いて移動します。私も一緒に入室しました。
担当医と看護師さんが付いていますが、時々二人ともいなくなる時があり、結構不安になります。
さらに陣痛が強くなり、妻は絶叫状態。それでも陣痛と陣痛の合間にはとても穏やかな表情になります。看護師さん曰く
「出産の時、女性は皆、マリア様になるんですよ」
午後1時21分、無事出産。男の子です。体重2624kg。最初の陣痛から出産まで4時間余り。看護師さんによると、とてもスムーズな出産ということでした。妻の絶叫を聞いた時はいったいどうなることやらと思うばかりで、何もできず、ただ手を握っていただけ。よく頑張ってくれました。
体を洗った後、しばらくカンガルーケア。妻の胸の上で気持ちよさそうに眠っています。それから体重、身長を計って病室へ戻りました。病室へ戻るやいなや、ウンチ。初ウンチおめでとう。顔を見ても、ちょっとむくんでいるような感じで、誰に似ているのかよくわかりません。
気が付くと午後3時過ぎ。妻も落ち着いているし、そろそろ帰ろうかと思っていたところへ、看護師さんがやってきました。
「胎盤はどうしますか?」
「え? 胎盤ですか…、どうするって…、みなさんどうするんですか?」
「そうですねぇ、だいたい病院で処理しますが、持ち帰る方もいらっしゃいます」
「持ち帰ってどうするんですか?」
「庭に埋めて、その上に木を植えたり、外国では食べるところもありますねー」
「えーっ、食べるんですかぁっ」
まあ、お腹も減っていませんし、とりあえず持ち帰ってからどうするか考えることにしました。
しばらくして看護師さんが白いポリ袋に入れた胎盤を持ってきました。中を覗くと、かなりグロテスク。そりゃあ人の内臓だもんなぁと、変に納得。
「じゃあ、明日また来るから」と妻と息子に告げ、胎盤が入ったポリ袋を手に提げて病室を出ました。
車に乗り込み、家に向かう間も、胎盤が気になってなりません。
(とりあえず血抜きして、乾燥させるか)
家に着いたのが午後3時前。今から会社に戻るのも中途半端なので、会社に電話してそのま今日は休むことにしました。
それから大き目のステンレスのボールを準備して、流し台で胎盤の血抜き作業。見た目はレバーみたいですが、表面には血管が網の目のように張り巡らされています。素手で触った感触はというと、ヌルヌル感は全くなく、鶏むね肉のような、弾力のある肉の塊という感じ。
血抜きは胎盤を入れたボールに水道の水を少しずつ流しながら、胎盤を手でしごくという作業。釣った魚の血抜きくらいに考えていたら、とんでもありません。延々と1時間近く水を流しながらしごき続けたのですが、それでもまだ血がうっすらと滲んできます。もういい加減手がつかれてしまったので、キッチンペーパーで水気をふき取り、別のボールに入れて脱衣室に置き、除湿機をかけっぱなしにして乾燥させることにしました。
10月28日(木)
台風14号が沖縄方面へ向かうも、東側にそれて暴風圏からは免れました。
仕事を定時で上がって病院へ。途中、誕生祝いのケーキを買いました。妻によると、息子は昨夜から、38度ほどほの熱があるようです。不快なのかぐずってばかり。母乳をあげても、ちょっと吸いにくくなるとすぐに泣きます。今はいっぱい泣いて肺を強くしなさいねー。
買ってきたケーキを箱から出して、「0」の形のローソクに火をつけ、夫婦2人で吹き消しました。
「生まれてきてくれてありがとう」
そろそろ名前を決めないといけません。目が大きくてキラキラ輝いているから、私から1文字とって「泰輝」ではどうだろう、と妻に提案すると、彼女も、周りを明るく照らすようなイメージを考えていたようで、2人の意見が一致。今日から君は泰輝くんだ。
50歳のオールドルーキー父ちゃんと40歳のオールドルーキー母ちゃんの子育ては始まったばかりです。