3月18日
最近、超ヒマな日々が続いていたところ、どういうわけか22日から笠置町の南山城青少年自然の家という施設でアルバイトをすることになってしまいました。
荒木は何日かごとに昼休みの時間を利用して、うちに弁当を食べに来ます。あいつはどうしようもなく相変わらずすぎて、この前の土曜日、仕事が終わってからうちに寄り、これからバイクで彼女と梅を見に行くというので、俺が「花見の後は、彼女のアパートで泊まって、ええやないか」と言うと、ニターっと笑って「変なこと言うな。〇〇〇立って来たやんけ!」と、今さらながら、必要以上な下半身の逞しさには驚かされてしまいます。
このところ荒木からは「自転車買え、自転車買え」とばかり言われ続け、「テメーのために俺は自転車買うのんとちゃうわ」と言いたいのをつらえつつ、田代と3人で自転車でどこかへ行くのを楽しみにしております。
3月27日
昼間、ずっと南山城村青少年自然の家でバイトをしていて、手紙を書くのが遅くなりました。
私が赴任する学校が、加茂町の隣の木津町の木津中学校に決まりました。
今日、学校へ行ってきたのですが、いきなり共産党の青年部の連中に取り囲まれ、ケーキを出されて歓迎会をされてしまいました。ここ2,3年、京都府下で教育委員会及び教職員の仕事をしている人間で、私のオトンを知らない人間はいないぐらい世間を騒がせた教頭の息子ということで、4人の新人の中で私だけ視線を合わせて笑うヤツがおりませんでした。
それにしても青年部の連中、もののみごとに民青顔で、本当に関心してしまい、思わず大きくうなずいてしまいました。
まだこれからどうなるのか、まるで分らないので、もう寝ます。
4月7日
わけの分からないまま、ドサクサにまぎれた日々を送っております。
何からどのように書いていいのか分からないまま、書き続けます。
赴任した木津中学校は一学年6~7クラス、一クラスが41~43人という規模で、学校内が今流行りの非行少年に振り回されています。彼らは教室などには一切入らず、職員室や校内を金槌やキリなどを持って一日中うろついております。
どういうわけか、私は連中を嫌いにはなれず、他の先生方からひんしゅくを買っているようです。
4月10日
職員室の私の机の上に置いておいたタバコを盗られてしまいました。おそらく悪ガキどもの仕業でしょう。
悪ガキの一人が職員室で遠くから私に「俺、あのセンセ好きやんけ」と言ってくれますが、あまり笑いすぎるとなめられるので、口で笑って目で睨みつけるという複雑な表情をしてしまいました(まわりの先生方の視線を意識しながら)。
悪ガキの一人が職員室ですれ違いざま、私の胸をポンと叩いてきました。すかさず同じことをやり返し、同じくなめられるといけないので、顔の表情はいっさい変えません。
技術科実習室のガラス窓に石がぶつけられ、3つの穴ができました。
4月11日
悪ガキどもが職員室でさんざん遊んでから出ていく時に、私が一人の顔をずっと見続けていると、イカツイ顔をし続けていた奴が、急に顔から力が抜けたようにニターっと笑いました。カワイイ。
授業が終わり、職員室で座っていると悪ガキの一人がわざわざ私の顔の前に顔を出し、ニターっと笑います。愛想が良すぎる。やはり、何かの報告に来たようです。
そいつの話によると、清掃の時間、技術科の実習室のドアのカギを金槌でぶっ壊し、準備室の錠前も金槌でぶっ叩いたが開かず、ヘアピンで開けて中に入って、職員室から盗ってきたコーラを飲み、外で買ったサバ寿司を食べたといいます。それから飲んで空になったコーラの瓶を壁や机にぶつけて割っていたところ、一人がコーラの瓶を万力に挟みつけて割った時に、ガラスの破片で手を切ってかなり出血したというので、実習室に行ってみると、悪ガキたちはすでにいなくなっており、割れたコーラのの瓶とサバ寿司が散乱していました。やれやれ。
4月12日
掃除の時間に1年5組(私の受け持ちのクラス)の近くに悪ガキの一人(2年の小坂)が1年生への顔見せで突っ立っていました。1年5組の生徒が珍しがっていっせいに見たために、悪ガキが窓ガラスを3枚割ってしまいました。
危険を感じて5組の連中に「お前らの考え方は甘すぎる!」と、本気で怒ってしまいました。
気が昂っていたので、終わりの会の時に廊下からドアを蹴った1年生に、巻き舌の汚い言葉で怒鳴ってしまいました。クラスの子がビビッてしまったので、頭をかき、笑いながら「教師になったばかりで、教師の言葉使いが分からへんねん」と言い訳をしました。
放課後、教頭先生が新しくつけてくれた実習室のドアのカギの調子が悪く、開かないので悪戦苦闘していると、悪ガキどもが集まってきて「これは俺がやった」と言いながら、手伝ってくれましたが、そのうちに卒業生の福田というヤツから声がかかり、山城中学に殴り込みに行ってしまいました。5分ほどして私が職員室に戻ると、30歳前後の先生が全員殺気立って「山城や!」と出ていきました。
それから20~30分ほどして、また実習室のドアのカギで悪戦苦闘していると、悪ガキどもが戻ってきて、〇×のアホがどうのこうの、ポリがどうのこうの、センコーがどうのこうのと言いながら、私のところに来て、ドアのカギを開けてくれました。
それに加えて準備室の錠前の蝶番も、
「こうしたら盗られにくい」
「ここに付けた方がいい」
「これは俺が壊した」
「1個では足らないので沢山付けた方がいい」
などと、訳の分からんことをほざきつつ、後でぶっ壊すのは自分たちであることも忘れて、全部やってくれました。なんやねん、こいつら。
作業が終わりに近づいた頃、一人が「センコー見とる」と言って、2,3分もすると、山城中学に殴り込みに行った連中が今度は技術室で何か悪い事やっとるらしいということで、6.7人の先生がやってきました。
一応、私が「実はこいつらが手伝ってくれているのです」と説明したのですが、先生方は何か汚いものを見るような目で連中を見ていて、私も悪ガキたちと一緒に悲しくなってしまいました。
他の先生方は、山城中学まで行って、さんざん悪ガキどもに迷惑を掛けられているのに、学校に戻ったら、私が悪ガキどもとと一緒に笑いながら作業しているというのは納得がいかないという事もあるのでしょう。
その後、悪ガキどもが、割れたガラスの掃除もすると言ってきかなかったのですが、最終下校の時間もとっくに過ぎているので、申し訳ないとは思いつつ、私ではそこらへんが指導しきれないので、ベテランの生徒指導の先生に任せて、私は職員室に戻ってしまいました。
悪ガキどもが帰ってから、実習室に戻ると、車のカギと財布が入っているズボンが無くなっているではありませんか。その場にいた先生方とさんざん探した末、机の引き出しを開けてみると、カギも財布もそのままの状態でかくしてありました。何故か思わず笑ってしまいました。
※名前は全て仮名