6月2日
なかなかのドラマの手紙をじっくりと読ませていただきました。途中から声まで出して読んでしまいました。まるで一冊の恋愛小説を読み終えたような充実感です。
読み終えて、これは私が担任している2年1組のホームルームの時間にぜひとも生徒に読んでやろうと決心しました。
私は、今年は2年と3年の技術を教えているのですが、たまたま3年生の授業(電気)が実習前で、やる事がなくなってしまい、ただでさえ3年生は週に3時間もあるので、やる事がないのですが、たまたま2年1組のホームルームの時間に忘れたらあかんと思って持っていた手紙を、3年生の技術の授業で紹介しました。
いろいろ前置きして、例えば女も男も中学、高校という時期には純粋に異性を愛する。そして年月が経っても、それなりにその頃の恋愛は純粋なまま残る、とか、
「みんな知ってるか。やっぱり男と女は離れたらあかんなあ。世間には愛があれば離れていてもとかいう話もあるけど、あれはウソや。あのなあ、離れていてあかんようになるのには2通りあんねん。ええか、よお聞いとけよ。2通りやねんぞお。まず1つは離れていて寂しくなって、どちらかが、彼女、彼氏をつくってしまうパターン。ほんでんもう1つは、離れているのでお互い自分の中で相手の人間像を、自分の都合のええように作ってしまい、久しぶりに会って現実とのギャップに幻滅してしまうパターンや。ええか、よう覚えとけよ、とゆうてもまだちょっと早いかもしれんけどなぁ」
講義の時は、私語ばかりなのに、気持ちが悪いくらい静まりかえって、全員が爆笑。また急に静まり帰って全員が爆笑の連続で、手紙を読ませていただきました。
その間、いつものように悪ガキの2、3人が前の廊下をターっと走って逃げて行きました。普通は何人かの教師がその後をターっと追いかけていくので、一瞬、他の先生に授業中こんなことを1時間もかけてやっているのがばれるのではないかと、急に黒板に向かって「えー、蛍光灯というのは電圧が…」とポーズをつけてみたり。結局、教師は追いかけて来なかったのですが、クラス中が大爆笑となりました。
手紙のポイントを押さえて講義をしてやったのですが、一番私自身も身につまされる事なのですが、あの空港が近づいて分かれるシーンでの貴殿と寛子さんの会話や表情や雰囲気。
「大人の男と女ちゅうのは、きわめて微妙なんや。ほれみてみい、こいつはここで、ニタニタと笑うやろ。みんな分かるか、これがああんのや。ここでなあ、笑ってしまうやつは、女をものにできひんのや。分かるか?男が女を真剣に見つめかえす、これなんや。しかし、悲しいかな、なかなかそれがでけへんのやなあ。男って悲しいなあ…」
最高の1時間でした。
その次の日、前日の授業が再現できるものと信じて2年1組のホームルームでおもむろに紹介したのですが、女子はしっかり聞いていたものの、男子のガキどもはもう一つ集中する事ができず、全体としてはイマイチでした。1年早すぎたんだと思います。
話は変わりますが、この前、ちょっとした事から川辺先生と2人でまたもや飲みに行ってしまいました。平日、学校の帰りに。私は川辺先生が好きです。メチャメチャ面白く、2人で飲んで、12時頃、もう帰るという川辺先生をもう一軒ということで、知っている店に。
二軒目を出たのが3時過ぎ。2人とも完璧に酔っぱらっていて、店を出て階段を降りるなり、川辺先生が倒れてしまい、声をかけてもうんともすんとも言いません。私は駐車場に車をとりに行き、川辺先生を抱きかかえて車に乗せ、彼女の自宅まで送ったのですが、起こそうとしてもまったく起きないので、しかたなく自分の家まで帰り、川辺先生を抱きかかえて車から降ろし、部屋へ入れて布団を敷いて寝かせたのでした。
少し眠って学校に行く時間に川辺先生を起こしたのですが、彼女は何も覚えていないようで、枕元の私と眠っていた部屋を見て、
「もういやや、またやってしもうたわ」と言って、再び布団をすっぽりと被ってしまったのでした。
その後、私の両親に少し挨拶して、吐いて汚れているトレーナーを脱いで私のTシャツを着て2人で学校へ行ったのですが、朝の職員会議と朝の会の間中、川辺先生の姿が見えず、2年の先生で探した結果、保健室で来る途中で買った缶コーヒーを握りしめながら眠っていたのでした。
彼女は1,2時間目、私は2,3時間目の授業を二日酔いのままやって、4時間目が始まると同時に2人で時間休を取り、学校を抜け出して帰りました。
その次の日、みんなの視線が冷たかったこと。自己嫌悪しかありません。川辺先生は仕事はバリバリですが、どうしようもなく大人になりきれないところがあって、私は好きです。美人でもありませんが、私の女性観は彼女に会って本当に変わってしまいました。本当に面白い人です。
今日から教育実習の学生が来ています。私がまだ2年目というのに、私のクラスにも女性の教生が来ました。1年ちょっとしか先生をやっていませんが、つくずく教生というのはまだまだ素人やなあと思います。
そんことはどうでもいいのですが、最近、特に自分の女性の趣味が自分自身でも分からなくなっています。教生の子も、それなりに美人でそれなりに女らしいのですが、まるでピンと来ません。しかし、嬉しくない事もないです。
教生の中に、大学→OL→美術の短大→結婚→教生という女性がいて、聞いてみると、偶然にも私と同い年で、中学も一緒でした。誰々知ってるという話の中で、私が「ほんなら高田智子、知ってますか?」と言うと、「知ってるけど、彼女、今年の3月に結婚したらしいですねぇ」
私は軽く「そうかぁ…」と言いながらも、心の中では激しく動揺してしまいました。やはり私にとって〇〇(もう書きたくないです)はあまりにも大きすぎます。こうして書いている今、〇〇は誰かに抱かれているかと思うと、私は…。毎日毎日、学校に通う道、あと35分早く家を出れば、バス停で待っている〇〇がいる、と私は思い続け、でも、しかし、その勇気がありませんでした。もはや、彼女は3月に結婚していたのです。
私は今(相変わらず毎晩ですが)酒を飲んでいます。忘れもしません。浪人の時、数少ないデートの時間を。喫茶店で向かい合って座って見た時の、彼女の白くて細すぎるピアニストの指を。白いブラウスの清純さを。歩いている時に初めて触れた腕の感触を…。しかし、今は、と思うと、私には耐えられそうにありません。悲しいというよりも、やっぱり悔しいです。カッコイイ男ならいいけど、やっばり悲しいです。
彼女が大学祭で占ってもらった話を思い出します。
「私、結婚するの遅いねんてぇ、25歳やねんてぇ、そうかもしれへんなぁ」
1年遅れましたが、26歳の3月にやっぱり、とっとと結婚してしまわはりました。