以前【キャラ弁ウインナー】で作ったことがあるユムシ。
実は、実物を見たことがありません。
というか、正確にいうと、潮が引いた干潟のわずかに水がたまっているところで、半透明の平たくて長ーいベロみたいなもの(吻)を出しているところは見たことがあるのですが、ドロの中の本体は見たことがありません。
長ーいベロで有機物をなめとっているのですが、近づいて触ろうとすると、一瞬で引っ込んでしまうのです。
目みたいなものはないようだし、どうやって感知しているのでしょうか。
歩いて近づいたりすると、直接、吻に触れなくても引っ込んだりするので、もしかしたら振動を感じ取って反応しているのかもしれませんね。よくわかりませんが。
で、ある金曜日の夕食の席で、家内がいきなり、「明日はユムシをとりに行こう!」と言い出したのです。
以前、干潟観察会に家族で参加した時に、初めて見たユムシの吻の動きに興味を持った息子もすかさず賛成。
「でも、どうやって捕まえるの?」(息子)
「掘るっきゃない」(家内)
「誰が?」(私)
「お父さん!」(家内・息子)
というわけで、次の日の土曜日、我が家の「ユムシ捕獲作戦」が決行されたのでした。
捕獲場所は、沖縄県南城市の佐敷干潟。
干潮時には広大な干潟が現れます。野球場5~6面分はあるのではないでしょうか。
干潟の砂の中に縦穴を掘って生息していて、干潮時には縦穴から細長いベロ、吻(ふん)というそうですのような吻を出しているところを観察することができます。
いました、いました。
3人でそーっと近づきます。
家内がベロを手で押さえ、私がその周りを掘り、ユムシが出てきたら息子が手で捕まえるという作戦です。
家内が見事「吻」を抑え込みました。私がその横の辺りを手で掘っていきます。
掘る事5分あまり。なんか紫っぽい色をした本体が見えてきました。
「いたいた!」
息子がてを伸ばしてつかみます。
「ぷちゅっ!」「あっ…」
強くつかみすぎて、お尻(たぶん)からウンチが飛び出てしまいました。
沖縄に生息しているタテジマユムシは、紫色の体に縦じまがあるそうなのですが、ちょとこの状態ではよくわかりませんね。
そっと水たまりの中にもどしましたが、ぐったりして動きません。
「死んじゃった?」(息子)
「みたい…」(家内)
「せっかくだから、持ち帰って食べる?」(私)
白い目で私を見る家内と息子。
「…気持ち悪いからやめるか、ウンチもしてるし…」(私)
罪の意識にさいなまれたのか、息子はしばらく、動かなくなったユムシを指でつついたりしています。
「釣りのエサにも使われるくらいだから、満潮になったら魚がやってきて食べるよ」(私)
すると息子はあっさりとユムシの蘇生を諦め、干潟に流れ込んでいる小川の方へ走っていきました。
しばらく川の中をザブザブと歩き回っていましたが、川から上がったところで、足元を見て固まっています。
「お父ーさん!」
息子の呼ぶ声。
ケガでもしたのかと思って、走り寄ると、
「トントンミーに捕まったぁ!」
息子が指さした足元を見てみると、ちっこいトントンミー(ミナミトビハゼ)が、右足の親指にしがみついているではありませんか。
この状態を「トントンミーに捕まった」と言うの?
まあ、「ユムシを捕まえに来て、トントンミニーに捕まった」という息子なりのオチを表現したんでしょうな。
息子を“捕まえた”トントンミーは、しばらく息子の足の上をモゾモゾと動き回ったあと、ピンピンピンッと跳ねて小川の中へ消えたのでした。