【1986年 新任教師Mからの手紙】その1  自然とナイフとサバイバルに憧れる日々

薪に突き立てたナイフの写真 1986 新任教師Mからの手紙

1月27日

 ずいぶんとご無沙汰しておりました。

 とりあえず、明けましておめでとうございます。

 京都は完璧に寒く、雪なんかもよくちらついたりします。とにかく朝起きるのがつらいのですが、5年間も沖縄で生活していたために、「寒い」という感覚がもうひとつ分かりません。

 学校の方はもはや3年生の期末テストを3日前に終わり、卒業式を控えています。受験シーズンです。私の1年5組も、以前の女子の反抗もいくぶん和らぎ、多少柔らかい雰囲気になってきました。

 1カ月くらい前、2年生の担任の30歳前の先生が学校に来なくなりました。精神的にまいってしまったようです。2年生がかなり全体的にだらしなく乱れていて、まっさく情けなく、特にその先生のクラスもひどくて、精神的にまいってしまったらしいのですが、特に若い教師にとって人格破壊という直接的な生徒の攻撃を受けて、給料をもらっている面もあるような気がします。

 そんなことがあって、まわりまわって1年生の書写にも新しく講師の先生が来ることになったのですが、その人が京都女子大学の4回生で、なかなかの美人で性格もよく、今週の金曜日に新年会もかねて歓迎会もすることになりました。

 いまいち自分が何を考えているのかわかりませんが、もうそろそろ結婚の相手も見つけたいので、ひょっとしたら何らかのアプローチをしそうな感じがします。

 話がそれますが、奈良に小さな路地を入っていったところに、アンチークな和風の酒も出している喫茶店があって、めちゃくちゃいいです。あまりにも感じが良すぎて、夜、学校の先生としか入ったことがありません。スーツ、ネクタイ、革靴姿の自分が、一人で入る気になれないほど、いい店です。彼女ができたらその店で2人で酒を飲むのが夢です。

 私生活では去年以来、休みには必ず自転車に乗って奈良方面をぶらついています。この前家に帰る途中でパンクして、家まで自転車を担いで帰ったのですが、自転車を担いでてくてくと歩いている自分が何となく嬉しくて、変な感じでした。

 最近、すごくサバイバルなことに興味を持っています。人のいない自然の中でとにかく生活をしたいです。ただ、自然の中に入るだけ。例えば山に登るとかにはまるで関心がありませんが、とにかく自然の中での生活を体験したいです。

それに関連してめちゃくちゃナイフが欲しくなってしまいました。何故か刃物屋に行くことに抵抗があったのですが、今日初めて勇気を出して刃物屋に入り、じっくりとナイフを見てきました。ブランラドのナイフは2万円以上して手が出ないけど、明日あたり、1万円の折りたたみ式のナイフを買うことにします。

 ナイフは今どきみんなステンレス製でもうひとつ厚みもなく、多少残念ですが、とにかくナイフを手に入れて、自転車のパンフレットを見て夢を膨らませたように、ナイフを見ながら春の計画を練ることにします。

 刃物屋のおばちゃんが言っていましたが、ナイフを集めるマニアも多く、最近映画の「ランボー」が公開されてから、大きいナイフがよく売れるそうです。なんとなく、3つ、4つナイフを買って思わずマニアになってしまいそうな気もします。

 自転車で泊りがけで遠くに行く時もそうですが、遠ければ遠いほど、日常生活から解放されて自由になれたような気分に(現実からとんずらしたような気分に)なれて、気持ちがいいのですが、今、山の中にそれこそ丸太小屋でも作って泊まってみたいなあとよく思います。

 とりあえず、明日ナイフを買って、春にテントと寝袋を買って、春休みに自転車に乗ってごとかに行きたいです。

2月2日

 昨日「ローマの休日」という映画を観ました。映画を観るのは久しぶりですが、なかなかの名画でした。

 この前、1万円も出して折りたたみ式の小さいナイフを買いました。今年の春は何が何でもサバイバルに挑戦します。

 この前、書写(習字)の講師の先生と理科の先生の退院祝いを兼ねた新年会がありました。書写の女の子は、一応付き合っている別れかけのボーイフレンドがいるとの事ですが、その子が今週の水曜日頃に沖縄に友だちの女の子と行くらしいです。まあまあなかなか可愛い女の子ですので、案内の件でもし何かあったら連絡します。