潜水少年
小学生の頃、近くの海でナマコをよく食べていました。
実家は長崎県の大村湾に面した田舎町で、海までは歩いて2,3分で行けましたので、庭の続きみたいな感覚でした。
夏休みは、ほとんど毎日海で遊んででいた記憶があります。
海で遊ぶためになくてはならないものが水中眼鏡でした。ゴーグルではなくて、鼻から目まで覆うマスクタイプです。
近くの雑貨店には夏になると水中眼鏡を売っていました。たしか当時の値段で、安いのは50円くらいだったかな。高いのでも200円くらいだったと思います。
今のようなシリコンにプラスチックレンズではなくてゴムにガラスレンズ。安いやつは、ガラスが薄くて、ちょっと深く潜ると、といってもせいぜい2mくらいですが、「ミシミシ」と音がして、ちょっと怖かったなぁ。
当時の子どもたちは小学校に上がる前から、水中眼鏡をつけて海で遊んでいましたね。泳ぎよりも先に潜ることを覚えていました。なぜかというと、海底にいるサザエを獲るという目的があったからです。海の中ではなかなか探すのが難しく、一人で獲れるようになったのは小学校の高学年頃でしょうか。それまでは上級生の潜りを真似ながら、とにかく潜る。
最初のうちは、海水では浮力が大いきいため、なかなか潜れません。頭は沈んでもお尻が上がった状態で足でバタバタ海面を蹴って、前に進むだけ。そのうち、反動をつけて腰を垂直に曲げ、足を上にあげるという、いわゆる「ジャックナイフダイブ」が不格好ながら出来るようになります。
泳ぐよりも先に、潜ることを覚えたので、小学校に上がって初めてプールで泳いだ時はびっくりしました。頭を下げてちょっと潜ろうとしたら、すーっと体が沈んでいくではありませんか。先生も私が沈んでいくのを見てびっくりしたようで、あわてて私を引き上げてくれたのですが、当の本人は別に溺れた覚えはないのです。プールの底で体を反転させて上を見ていると、先生の手が伸びてきたので、つかんだだけ。
一年生の最初のプールの授業で、いきなり潜った私が悪かった。プールは潜るところではありません。泳ぐとろころですね。
海でナマコを丸かじり
冒頭で、海でナマコを食べるといいましたが、文字通り、海で獲ったナマコをその場で食べるのです。
季節は初冬。浅瀬の岩場にいる比較的小さいナマコをつかまえて、お尻、もしくは口から小指を突っ込んで内臓を押し出し、海水で洗って丸ごとパクッと食べるという、まことにワイルドというか、原始的というか野蛮な食べ方をしていたんですよ、その頃のその地域の少年たちは。
お菓子がなかったわけではないのに、なんで生のナマコを食べたのかなぁ。子どもにはまだ、動物としての本能が残っているのかも。
ナマコは正月には欠かせません。ナマコの酢の物ですね。コリコリとした食感は今でも覚えています。
沖縄のナマコはやたら長い
ところで、沖縄では一部の地域でナマコを食べているところもあるようですが、一般には食べられていません。鮮魚店でも見かけませんし。
沖縄の海でよく見かける黒くて長いナマコは、ニセクロナマコといいます。身に毒があって食べられません。食べられるのはクロナマコというやつ。
いずれもビローンと長く、良く似ているのですが、クロナマコの方は、体全体に砂をかぶっていることが多く、ニセクロナマコはデローンとそのまま横たわっているので、見分けるのは簡単です。たまに、下の写真のように口の周りから触手を出して、エサをあさっていることもあります。
一方、クロナマコは中国では高級食材で、「黒いダイヤ」とも呼ばれています。日本や沖縄からも乾燥したものや塩漬けにした加工品が輸出されています。
面白いのは中国では乾燥ナマコには金券的価値があって、レストランやホテル、デパート、小売店などでお金に換えられるそうです。
財布の中に乾燥ナマコが入っていたりして。デカくて入らないか。
デカいといえば、沖縄には世界最大のナマコといわれているオオイカリナマコ、クレナイオオイカリナマコが生息しています。太さはいずれもクロナマコくらいなのですが、長さが尋常ではなく、最長のものだと2メートル以上にもなります。
名前だけ聞くと、海底で怒りまくっているようなイメージですね。もちろんナマコですから、海底でおとなしくしています。ただ、見た目はちょっと怖い。黒と白と茶色の独特な模様があつて、初めて見た人はウミヘビ、あるいはウツボと見間違える可能性があります。
名前の由来ですが、体の表面に「骨片」という、目に見えないくらいの小さなトゲが無数にあって、その形が船の錨ににているところからきているそうです。
別に怒り狂っているわけではなくてよかったよかった。ところがですよ、この「骨片」が曲者で、手で触ったりすると骨片が刺さってくっつくんですよ。腕とか皮膚の柔らかいところにくっついたらはがすときにちょっと痛いです。
まあ、オオイカリナマコは見た目がグロテスクなので、普通あまり触ろうという気にもなりませんが、グロテスクなものが大好きで、つい触りたくなる人は気を付けてください。
くっつくといえば、ニセクロナマコを突っつくとお尻から糸コンニャクのようなもの(キュビエ器官といいます)をニョニョニョニョ~と出すのですが、手で触るとこれがまたベトベトと絡みついてきます。
オオイカリナマコの体のようにチクチクはしませんが、右手にくっついたやつを左手でとろうとしたら左手にも絡みついて、それをまた右手でとろうとしたら右手にさらに絡みついて、みたいに結構厄介な事態に陥ってしまいます。
そんなことになってしまった時は、砂でこすり落とせますので、試してみてください。わざわざ試さなくてもいいか。
ニセクロナマコウインナーを作ってみた
そんなわけで、ニセクロナマコウインナーを作ってみました。
材料
- 胴体 → ウインナー
- 触手 → ニンジン
作り方
ポイントは、触手を出していない状態だと、ただのウイナーにすぎませんので、ニンジンで作った触手を6本挿しました。
それでも何だかわかりませんね。
ちなみに息子は海でニセクロナマコをみつけると、つついてしょっちゅうキュビエ器官に絡まれているので、すぐに分かったようです。
道具・パーツの作り方・組み立て方についてはこちら。