ねぇ、おじさん。お父さんがいるよ。間違った。お父さん、おじさんがいるよ。
先日、息子と近所のスーパーへ買い物に行った時のこと。鮮魚コーナーの前で息子がそう言いました。
最近、わざと言い間違えてウケをねらうようになった息子に、ボケで返しました。
え? おじさん? どこのおじさん?
どこのおじさんじゃなくて、魚のオジサンだよ。ほら。
うわーっ! ひとしおじさん。こんな姿になってしまって・・・
さらにボケを返します。
何言ってんだよー。だいいち、ひとしおじさんはこんなヒゲないし。
あ、ヒゲだったらじいちゃんか?
だからー、魚のオジサンだってば。
坂田のおじさん? そんな人いたかぁ?
もーっ、ボケおやじ!
お息子はまだ笑っていましたが、あんまりやりすぎると、怒りだしそうなのでこの辺でやめときます。スーパーの鮮魚コーナーで漫才するのも周りに迷惑かかりますから。
おーっ、オジサンかぁ。今夜はマース煮にする?
やったー! おじさん、じゃなくてお父さん、ありがとう。
(うーむ、最後はやられてしまったわい)
ここまでの会話、魚にあまり詳しくない方には、何のことやらよく分かりませんね。
オジサンの名前問題
「オジサン」というのは魚の名前です。それも正式な和名。口の下に特徴的な2本の長い触覚があり、それがヒゲに見えることから「オジサン」と名付けられました。
ちょっと待って下さい。オスのオジサンだったら問題ありませんが、メスのオジサンはどーするんですか。
メスなのにオジサン? 普通、メスだったらオバサンでしょう。それで解決できればいいのですが、この問題がやっかいなのは、同じ種でオスにオジサン、メスにオバサンと分けて名前をつけていいのかという点です。
さらに、世の中にはおじさんみたいなおばさんや、おばさんみたいなおじさんもいるし、オジサンでいたいメスや、オバサンでいたいオスもいるかもしれません。性の多様性を尊重しなければなりませんね。
ヒゲがあるからオジサン、という安易なネーミングのために、ちょっとややこしいことになってしまいました。
幸い、沖縄では「カタカシ」と呼ばれているために、そのような問題は起きていません。
オジサンのマース煮
で、マース煮ですが、「マース」とは沖縄の方言で「塩」のこと。簡単にいうと塩味の煮汁で魚を煮るのがマース煮です。
ここで大事なのは、切り身ではなくて丸ごと煮ること。
いわゆる頭などのアラから美味いダシがでますから。
塩だけでもシンプルで美味しいのですが、昆布と沖縄の泡盛をドボドボっと入れて煮ると、生臭さも少なくなって、さらに美味しくなります。泡盛がなければ日本酒でもかまいません。
魚は白身系ならなんでもOK。
個人的にはエーグワー(ゴマアイゴ)のマース煮が好きです。背びれや尻ビレに毒のある鋭いトゲがある上、内臓が臭いため、本土ではアイゴはほとんど食べられないようですが、沖縄では鮮魚店やスーパーでも売られているほど、けっこうポピュラーな魚です。
内臓の臭みが身につかないように気を付けて取り除けば、刺身にしてもいけますし、バター焼きも美味い。噛み応えのある身はカワハギに似ていますね。
息子はマース煮が大好物で、食卓に出すと、何かにとりつかれたようにして食べます。
スーパーで買ってきたオジサンは全長約30cm。そのままだと鍋に入らないので、半分に切りました。
鍋の底に昆布を敷き、泡盛がなかったので日本酒と水を半々、塩を二つまみ。沸騰したら弱火にしてオジサンを入れ、10分も煮ればOK。最後にスープを味見して、塩で調整します。
お店などでは、沖縄の島豆腐も一緒に煮てあることが多く、ダシ汁がしみ込んでこれまた美味。我が家ではひたすら魚を食べたいので、島豆腐は入れません。
オジサンはマース煮にすると、身がホロホロと崩れるという難点があるのですが、息子はその難点を逆手にとりました。あらかた食べて鍋の底に崩れてたまった身をレンゲですくい、そこにポン酢をタラッとたらしてズズーッとすすって食べたのです。
残ったのは骨とヒレだけ。見事な食べっぷりに思わず拍手してしまいました。
はぁー、やっばりお父さんは美味い、間違った、オジサンは美味いなぁ
お父さん、じゃない、オジサンも喜んでるはずよ
オジサンウインナーを作ってみた
というわけで、マース煮にはできませんが、後日、オジサンウインナーも作ってみました。材料は次のとおりです。
材料
- 胴体 → ウインナー
- ヒレ・ヒゲ → ニンジン
- 目 → スライスチーズ
- 瞳 → 海苔
作り方
ポイントはヒゲ。口はやや下の方に切れ目を入れます。
おじさんが作ったオトウサンウインナー、間違った、お父さんが作ったオジサンウイナーだね。
まだ言うか・・・。
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